吸収する海

2018/01/30

飛行船のような鯨が僕の頭上を泳ぐ。

珊瑚礁のふりをしたカメラマンが僕を岩陰から盗撮していたが、僕は気づかないふりをした。

そのまま海の中を歩き続け、砂場が広がっている空間に出る。

足元には骨だけになったヒトデの死骸、そしてそれを住処にする海タランチュラの群れ。

きっとあのカメラマンはまだ僕を撮影し続けている。

撮られている側として僕は非常に気分が悪い。

目的はなんにせよ、彼に対して嫌悪感を覚え始めていた。

無許可で人を撮影するなんてのは罰当たりにもほどがある。

彼はきっと来世で苦労するだろう。

僕は彼を呪った。

岩肌にやすり掛けされて死んでしまえ・・・。

海サソリに刺されて中毒死してしまえ・・・。

酸欠になって死んでしまえ・・・。

ついに僕は彼に復讐をする決心をした。

彼を罠に仕掛けてやる。その名も渦トラップだ。

地上では普通に落とし穴を掘ればすむが、水中ではそうは行かない。

引っかかったところで、上に向かって泳げば助かるからだ。

そこで僕は考えた。上に向かって落とし穴を掘るのだ。

水中に作られた落とし穴は、彼を飲み込んでそのまま溺死させてしまう。

なんていいアイデアだ!学生時代に流体力学を専攻していて良かった!

早速僕は彼にばれないよう、魚を追いかける振りをしながら渦を発生させた。

この調子だ。このまま回転速度を上げていけば渦トラップが完成する。

僕は一気に泳ぐ速度を上げた。そしてついに渦トラップが完成した。

やったぞ。僕は渦トラップを完成させることが出来た!

しかし、僕は今になって気付く。あのカメラマはもう帰ってしまっていたのだ。

僕は絶望した。僕の計画は渦を巻いて崩れてしまったのだ。

渦が僕を見つめている。僕はその渦がとても寂しそうだと思った。

渦に手を伸ばす。すると渦の方からも手が伸ばされた。

その相互の手が重なりあった途端、僕は渦に飲み込まれた。

その瞬間を隠れていたカメラマンが撮った。